映像の仕事の傍ら、京都佛立ミュージアムでの学芸員を兼任してもうすぐ1年になります。
本日は記念展示「室町の救済者 日隆 写真の旅〜越中富山から種子島・屋久島まで〜」が無事終了しました。
日隆聖人の軌跡を辿り、その場所を2年間に渡って写真で撮影した風景を展示するという写真展企画でした。
写真家は僕の父、亀村俊二です。
日隆聖人をこのような写真展示で紹介する企画は、新たな試みだったようで
アンケートなどでも好評をいただき、盛況のうちに終了しました。
ただ学芸員としてひとつ心残りだったことは、写真展の印刷用紙を
非光沢にしなかったことです。
光沢紙と非光沢紙でどのような違いがあるかというと、
光沢紙は白い部分はより真っ白に、黒い部分はより真っ黒に見えます。コントラストが高く写真はしまって見えます。
非光沢紙はというと逆に白は沈み、黒は浮かび、全体としては少し暗い印象になります。
父の写真の特徴は、印刷の際にかぎりなく暗部に近い諧調部分に特徴をおいているので
光沢紙だと、照明の映り込みが邪魔して暗部に集中することができないので
非光沢紙があっています。
ただ非光沢を選ぶことは大変リスキーなことではあります。
20点以上の大きな作品たちを、全て非光沢で展示した際に
会場は印象としてかなり暗いイメージになると思ったからです。
日隆聖人の550回御遠諱の日程にも合わせた展示だったので、その法要時には
全国の大本山でもある宥清寺に7000人以上の方々が訪れて、ミュージアムにも来館します。
父の写真は大衆に共感を得るような写真ではないと思っていたので
来館者に暗い写真展だったという印象を与えないために、なんの疑いもなく光沢紙を選びました。
父も苦渋の選択で、光沢紙を選び印刷を始めました。
印刷が終わり、いざパネルに貼る作業の際に
当館ミュージアムの館長が、非光沢紙のテスト印刷を見て「全然こっちが好き!」とおっしゃいました。
父からは「非光沢で全て出力し直せないか」という相談をされましたが
印刷費や展示スケジュールの関係もあり、それは不可能になっていました。
見る側に立った考えを、反映したつもりが
それが写真本来のポテンシャルを最大限に引き出せず、盛況に終わったとは言えども、
より挑戦的な展示ができなかったことに、学芸員として大きな判断ミスをしたと思ったのです。
たとえ来館者アンケートなどでたたかれたとしても、
自分が目指す学芸員の理想の姿はそうではなかったと思ったのでした。
今後、より大きな企画展もあるだろうが、そんなときにこそ今回の経験を無駄にせずに
より自分らしい選択ができる学芸員になりたいとおもう。
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大きな判断ミス
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