先日、山形県酒田市にある土門拳記念館に行きました。
土門拳は私達写真家の大先輩であり、リアリズム写真に徹した写真界の巨匠であります。
私は土門拳先生の写真に憧れて写真家を志したのですが、一度も記念館を訪れたことがありませんでした。
そんな思いを胸になんとか連休を利用して行くことができました。
寝台特急で早朝坂田に着き心静かに写真と対峙したいと思って記念館の開くのを待って入館、ところが作品を観賞し始めると、側の三人づれの来館者が作品の前で「この写真は・・・ここが・・・どうだ」などと写真談義をしながら観始めたのです。
私はこれはかなわんと思い美術館のいちばん奥に展示されている「古寺巡礼」から逆に回ることにしました。なんとか静かに観終わり、残りを入り口付近の大勢の客に混じり、またざわざわした環境で観ることになったのです。そこでは、「あれぇー・・わあー・・」いろんな声が聞こえてきます。
最後を観終わったところでやっと私は気付いたのです。
「そこにある写真が観る人に声を出させているのだ」・・・と。
亀村俊二