近くに住むF君夫妻に山菜摘みに連れて行ってもらいました。 私達は身体ひとつでF君の車に乗せてもらいました。 京都市内から北に向かって車を走らせ一時間、滋賀県の朽木の山奥へ入りました。
山菜は、わらび、たらの芽、こごみ、こしあぶら・・・等々 「こごみ」は河原から萌えるような新芽を覗かせています。 始めての私たちも楽々と摘むことが出来ました。 「こしあぶら」という植物も始めて出会った山菜です。 その細長い幹を少しずつ曲げて、枝先の新芽をいただくのです。
教わりながらの山菜摘みも楽しく終えることができました。 そして帰り道、琵琶湖で小鮎を釣ることになりました。 車には竿やエサまで準備してあったのです。
夕暮れの琵琶湖に寒い風が吹き出し、湖というのに時折大きな波が押し寄せています。 私は足下を濡らしながらも夢中で小鮎釣りを楽しんでいましたが、帰る時間になって ふっと気付くと長靴の中はくるぶしのところまで水が溜まっているではありませんか。
替えの履物も無く、しかたなく裸足でいる私の側にF君の嫁さんが来て登山靴を脱ぎ始めました。 「これ、履いて下さい。」 と履いていた暖かそうな毛糸の靴下を差し出されたのです。
女性用ということで遠慮したのですが、なんどもかけられるあたたかな彼女の言葉に 私も思い切って履かせてもらうことにしました。 女物の靴下は少し窮屈でしたが、やがて冷えきった身体は足下からほかほかと暖まり始め おかげさまで、今日一日のしあわせを深く感じながらの岐路となりました。
今日もお二人の心配りには教わることが多々ありました。
F君夫妻にはいつもこうしてお世話になりっぱなしなのです。 こんなに奇特なご夫婦もおられるものです。私たちの周りには・・・。
亀村 俊二
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