昨年の春に買ってきた鉢植えの「ユーカリの木」、始め50cm位のものがグングンと成長して背丈ほどになりました。
朝夕に忘れることなく水やりをしていたのですがこの異常な夏の暑さのためか突然に枯れてしまって残念で仕方ありません。
家庭園芸にそれほど熱心というわけではないのですがスタジオの玄関には他にもいくつかの鉢植えを育てています。その鉢植えの中でひとつだけ私にとって誇れるものがあります。
直径1mほどに大きく成長した「アジアンタム」という名の観葉植物です。
(アジアンタム・やわらかい葉がふさふさと緑が美しい、涼しげでとても魅力的でデリケートな観葉植物)このアジアンタムと私はほぼ20年来の長い付き合いになるのです。
当時、私は写真のモチーフとして買ってきた小さな鉢植えのアジアンタムを繰り返し撮影していました。このアジアンタムが写真の片隅に登場すると不思議なほどにその写真が売れるのです。
そのことに気を良くして何度も何度も写真に撮りました。 ところが、出張から帰ってくるたびにこのアジアンタムの葉はちぢれたように枯れてしまっているのです。あわてて水をたっぷりとやるのですが一度ちぢれた葉はもう元には戻りません。
完全に枯らしてしまって葉がほとんど無くなってしまったこともありました。
その度にあらゆる世話をして新しい芽が出てくるのを待つのです。写真に撮っては枯らしてしまい、またやわらかい葉が出てくると写真を撮らせてもらう このアジアンタムとはそんな付き合いの20年なのです。
デザイナーの友人がスタジオに訪ねて来ました。
あれこれと話がはずむうちに、私は大きく育ったユーカリを枯らしてしまったことを話しました。友人は枯れた葉のユーカリをじっくりと見つめて、私に言いました。
「新しい芽が出てますよ。根元から。」
私は眼鏡をかけて彼の指差すところをよく観察しました。確かに若草色の新芽があちこちに見えています。ずっとそれを雑草と思い込んでいた私は、ことのほか感動させられました。そして枯れてしまった幹を根元から数センチのところでばっさりと伐ったのです。
残ったのは3cmほどの小さな新芽の数本です。
「さあ、大きく育ってくれよ・・・」
幾度の困難に打ち勝ってきた先輩アジアンタムの側で このユーカリの小さな新芽が無事に育ってくれることを望むものです。
亀村 俊二
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