昨年の1月に京都で個展を開いた時のことです。私が教える京都精華大学の写真の授業と個展の会期が重なったので、会場で作品を前にして講習することになりました。
14、5人の学生が円座になって茶菓子をつまみながらの授業は、雰囲気も変わり楽しんでいる様子がこちらにもはっきりと伝わってきました。
ところが何時も私の側に座る中国人留学生のT君は今日も授業態度が良く、熱心に質問も繰り返してくるのですが、テーブルに出した茶菓子には全く手を付けません。
遠い国からやってきた若い学生の身、お腹も空くだろうと、何度も彼に奨めてはみたのですが、ついに最後まで彼は菓子を食べようとはしませんでした。
授業終了後、身体の調子でも悪いのかそれとも他に何か理由があるのか、気になって彼に聞いてみました。何度も聞く私にT君は申し訳なさそうに言いました。
「先生から頂くのは智恵だけです」。国ではそう教えられました…と。
亀村俊二