子供の頃の正月風景を思い出しました。私の家は祖母と両親、兄と私の5人家族でした。 ご宝前のお祀りされた六畳間に集まって家族そろってのお参りを終え四畳半の居間のふすまを開けて少し広いめの間をつくると ご宝前に近い上座から祖母、父と順にお膳を並べます。
末っ子の私はいちばん端です。
朱塗りの膳の上に同じ朱塗りの椀や皿が四方に乗っています。 父の膳は大きくて次に兄で私の膳はいちばん小さなものでした。 祖母と母の膳は黒塗りで高い脚のついたもので椀は黒塗り中が朱に塗られたものでした。
元旦の挨拶を終え、祝い膳に箸をつけると新しい歳が始まります。 京都の雑煮は丸餅と頭いもの白味噌味仕立てを三ヶ日続いていただきます。頭いもは人の頭になれるようにと、大根や小芋そして花がつおがかけられゆらゆらと揺れています。
私は子供の頃、その濃厚な甘い白みそ雑煮が苦手でした。ところが、ふだんから小食ぎみの両親や祖母は一つ、もう一つと うまそうに餅をほうばります。
「この餅のどこがおいしいのやろ」と子供ごころに感じておりました。
今年も年末を控え正月を迎えます。
あの頃のように座敷で膳を並べ、大人達はきものなんぞ着て正月を祝うようなことなどなかなか出来なくなってしまいました。
もうすぐ息子たちが遠方から帰って来ます。 そしてあの白みそ雑煮をうまいうまいとおかわりするものもいますが 私と家族の数人はやはり未だに苦手なままでいるのです。
京都の雑煮とはそんな不可思議なものであると私は感じております。
亀村 俊二
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