借りたカメラで



今年の始めの頃、知人のTさんと最新のデジタルカメラについての話題で盛り上がっていました。

彼は最近、ニコンD3xという高級カメラを買ったばかりなのですが他にもカメラを持っているので新しいそれはあまり使っていない様子でした。
それをぼくに使ってほしいと言って彼は帰っていきました。 数日後、私の留守中に彼のカメラバッグが本当に届いてしまったのです。

バッグを開けるとあの最上位機種のニコンのデジタルカメラと交換レンズが黒い光沢を放って きっちりと詰められていました。こんな高価なカメラを預かってしまって・・彼の好意は嬉しいのですが気がしんどくなりそうな複雑な思いでありました。

暫くの間そのカメラバッグを棚の上に置いて使うことをためらっていたのですが実のところ日々、気になってしかたありません。ある日、折角の彼の好意になんとか応えなくてはと気を取り直しそれからは毎日のように借りたカメラを持ち歩きました。
さすがに使えば使う程、彼のそのカメラは私の手に馴染んで来るのです。

一時は、Tさんからの突然の申し出には戸惑いましたが結局、6月に開いた私の個展は全てTさんから借りたカメラで撮ったものとなったのです。
カメラも変われば、気分も変わる。これまで以上に満足な出来と成りました。すべて結果良し!
Tさん、改めましてありがとうございました。

亀村 俊二

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