この8月、ウイグル自治区ウルムチであった皆既日食の観測に長男が参加しました。 中国情勢が悪い中、心配していたのですが 好天にも恵まれ皆既日食の映像も良く撮れてなにごともなく帰って来られたこと 一先ず安心いたしました。
思えば私も1983年、インドネシアのジョグジャカルタの奥地で見られる 皆既日食の観測隊に加わったことがあります。 現地では私達が訪れる以前から雨が降り続き地面はぬかるみ状態となり ジャングルを切り開いた観測地は高温と多湿で劣悪な環境でありました。 京都で生活している私には耐えることができないほど厳しい熱帯の気候でした。
日本からの同行者の中には食中毒被害にあったり、 またマラリア蚊の恐怖にさらされるなど重い空気が流れておりました。 しかし、私達の観測地は運良くその日の朝から晴天で 正午近く、太陽は欠け始め日食はさえぎる雲もなく順調に始まりました。
原住民たちは「月が太陽を食う」と恐れてジャングルの奥に消えてゆき 山の稜線と接する空だけがかすかに青く 天空は黒い太陽を中心に大きな雨傘をかぶせたような墨色となり、 そして、黒い太陽の一部がピカッと輝きダイヤモンドリングとなるや 輪郭に青い炎が現われ始めました。
待ちに待った「コロナ」です。私は夢中でシャッターを押し続けました。 マラリア蚊や食中毒などの 重い空気はいつの間にか何処かへ消えさっておりました。
来年7月22日には奄美・トカラ列島などで皆既日食を見ることが出来るようです。
今度は長男の参加する観測隊に同行したいとひそかに狙っている私なのです。
亀村 俊二