パリから鉄道に乗ってベルギー、イギリス、スペイン、そして南フランスを妻とふたりで旅したときのことです。
旅の始まりのベルギーはブリュ-ジュでのできごとでした。
駅に降り立って、まず、街の方向に歩きだしたのですが、駅前にレンタサイクルをみつけ、自転車を借りることにしました。
街へ行くには、左の道でも右の道でもよいのですが、私たちは右の道を選びました。
さあ、出発です。
ところが100mほど自転車を連ねて走ったところで妻の自転車が石畳のせまい道のまん中にあいた小さな穴にタイヤをとられ、ゴツンという音をとともにパンクしてしまいました。ため息まじりで駅に戻り、自転車を交換、新たな気持ちでこんどは左の道をすすむことにしました。
ブリュージュは中世の佇まいを残した街並と運河が見事に美しく大勢の観光客で賑わっていました。写真も充分に撮り、きょう一日を満足して過ごすことができ、私たちはロンドン行きの夜行フェリーに乗るためまた駅に戻ってきました。
ところが駅までもう少しというところでゴツン・・・こんどは私の自転車のタイヤがパンクしてしまいました。
そこには、私たちの出発の邪魔をした「あの穴」がポッカリと口をあけていたのです。
どうか「すばらしい旅になりますように」とお願いしての旅の始まりでした。
亀村俊二
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